日程 : 2023年1月20日(金) 11:00 - 12:00
場所 : オンライン
講師 : 那須 譲治 准教授
所属 : 東北大学大学院理学研究科
主催 : 強磁場コラボラトリー
世話人 : 松田 康弘(物性研究所)
e-mail : ymatsuda@issp.u-tokyo.ac.jp
要旨:
絶対零度まで磁気秩序を持たない量子スピン液体は、およそ半世紀に渡って磁性分野における主要なテーマのひとつとして研究が続けられている。量子スピン液体候補物質として、三角格子やカゴメ格子など幾何学的フラストレーションを有する格子上の量子スピン系がこれまで主な研究対象だったが、近年、キタエフ量子スピン液体に注目が集まっている。この状態は、Kitaevによって提案された量子スピン模型の厳密な基底状態として実現し、そこからの素励起は、量子スピンが遍歴するマヨラナ粒子と局在するバイゾン励起に分裂したかのような準粒子として記述される。さらに、ある種のイリジウム酸化物やルテニウム化合物がその候補物質として注目され、実験、理論ともに精力的な研究が行われている。キタエフ量子スピン液体のもつ特異な性質のひとつは、磁場によってマヨラナ準粒子系がトポロジカルに非自明になり、非可換エニオンと呼ばれる準粒子が現れることにある。特に最近、キタエフ候補物質α-RuCl3の磁場下での物性測定が行われており、磁気秩序が消失し強制強磁性状態になる前に中間相が存在し、そこで磁気励起スペクトルに連続体が現れたり、熱ホール伝導度の半量子化の可能性が指摘されるなど、ホットな話題となっている。本講演では、キタエフ量子スピン液体に対する磁場効果を基礎的なところから概観し、最新の話題も含めて紹介したい[1]。
[1] レビューとして Y. Motome and J. Nasu, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 012002 (2020).
どなたでも聴講可能ですが、事前のオンライン登録が必要になります。
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