日程 : 2021年10月29日(金) 11:00 - 12:00
場所 : オンライン
講師 : 芝内 孝禎 教授
所属 : 東京大学新領域創成科学研究科
主催 : 強磁場コラボラトリー
世話人 : 徳永 将史
e-mail : tokunaga@issp.u-tokyo.ac.jp
要旨:
多くの鉄系超伝導体では、電子系が回転対称性を破る電子ネマティック転移とストライプ型の反強磁性転移がほぼ同時に起こるが、FeSe では例外的に反強磁性を示さず電子ネマティック秩序のみ示す点で、ネマティシティと超伝導の関係を調べる上で鍵となる物質であると考えられている[1]。我々は、FeSe の Se サイトを等電荷の S や Te に一部置換した系の電子相図を調べ、興味深い結果を得ているので、ご紹介したい。S 置換系では 17%、Te 置換では 50%置換付近で、電子ネマティック転移が完全に消失し、両方の系でネマティック量子臨界点の存在を示唆する結果を得ている[2,3]。一方で、超伝導転移温度 Tc は S 置換では量子臨界点を超えると急激に減少するのに対して、Te 置換では量子臨界点付近でドーム構造を示す[3,4]。Te 置換系で見られた超伝導ドームは、電子ネマティックの量子揺らぎが超伝導対形成に関与していることを強く示唆する初めての実験結果である。超伝導ドームがみられない S 置換系では、量子臨界点を境に全く異なる新しい超伝導状態が実現している可能性を議論したい。
[1] レビューとして、T. Shibauchi, T. Hanaguri, and Y. Matsuda, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 102002 (2020).
[2] S. Hosoi, K. Matsuura, K. Ishida, H. Wang, Y. Mizukami, T. Watashige, S. Kasahara, Y. Matsuda, and T. Shibauchi, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 113, 8139-8143 (2016).
[3] K. Ishida, Y. Onishi, M. Tsujii, K. Mukasa, M. Qiu, M. Saito, Y. Sugimura, K. Matsuura, Y. Mizukami, K. Hashimoto, and T. Shibauchi, preprint.
[4] K. Mukasa, K. Matsuura, M. Qiu, M. Saito, Y. Sugimura, K. Ishida, M. Otani, Y. Onishi, Y. Mizukami, K. Hashimoto, J. Gouchi, R. Kumai, Y. Uwatoko, and T. Shibauchi, Nat. Commun. 12, 381 (2021).
どなたでも聴講可能ですが、事前のオンライン登録が必要になります。
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